会話もなく終えた朝食。

ジャケットを身につけた夫に、私はカバンを渡した。

「――今日は……早く帰りますか?」

私の問いに何も答えず、夫は渡されたカバンを受け取った。

何も言わなくても、私は充分にわかっていた。

夫は、今日も帰ってこない。

今日も、夫は愛人のところに行く。

夫は背中を見せたかと思うと、リビングを去って行った。

私はそんな背中を追いかけることなく、ただ黙って後ろ姿を見つめる。

バタン…

空しく閉まったドアの音に、私はテーブルに視線を向けた。

夫と私の、2人分の朝食。

「どうしてこうなったの…?」

1人のリビングに、私の呟く声が虚しく響いた。

――私は、ただ幸せになりたかっただけだった

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