崩壊家族
もはや、夫は抜け殻以外の何ものでもない。

「じゃ、私はこれで帰るから。

あなた1人で暮らしてくださいね。

家の財産も所有も、みんないらないから。

私は彼がいれば、それで満足だから」

ふんと、息を吐いた後私は玄関に向かった。

「じゃ、さようなら」

後ろを特に振り返ることなく、ドアを閉めた。

バタン

こんなにも心地いいドアの音を聞いたのは、今日が初めてだ。

行ってらっしゃいと言ってるみたいだ。

スキップしたい気持ちを押さえながら、私は洋介が待つ家へ向かった。
< 74 / 105 >

この作品をシェア

pagetop