龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】

「ところで、クリスマスツリーってどんなのがいいの?」

居間に戻ると圭吾さんが言った。

「この辺には売ってないから、ネットショップで見たんだけど、たくさん種類があるんだね。驚いたよ」


「この辺のお店、ツリー売ってないの?」

そっちの方がビックリだわ


「そもそも需要が少ないから仕入れないんだ。隣町の店舗ならディスプレイで使っているけど」

「じゃ、圭吾さんは子供の頃にサンタクロースを待ったりしなかったんだ」

「有名なそのご老体の名前を知ったのは中学生になってからだよ。もうプレゼントをもらう『よい子』って年じゃないだろう? 志鶴は待っていた?」


わたしはサンタクロースでさえ待たなかった。

ううん、たった一度だけ本気で待ったけど


「それがね……早いうちに正体が親父だと気づいてしまったの」

ニコッと笑ってみせる。

「ずっと気づかないフリしてあげてた――でもいいの? 龍神様の子孫だっていう羽竜本家の当主がクリスマスだなんて」


「サンタクロースは用意できないが、クリスマスツリーくらいは飾ってあげられるよ。体面上、この部屋に飾ることになるけどね」


「本当? あのね、わたしは緑色のがいいの。本物の木に似せたやつ」


「オーソドックスなものってことだね。他にもライトとか、飾りとか色々あるんだろう?セットの物もあるようだが、それだとありきたりな感じがしないか?」


わたしは『セットのでいい』と言いかけて言葉を飲んだ。

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