『挨拶くらいすれば。』

いかにも校則違反な長い髪を揺らしながら、一つ学年が上だという細身の男が言った。

『ははっ!』

ピアスを開けたてで、赤く腫らした耳たぶを触りながら嵐は笑った。

早瀬 嵐、高校入学して選んだ部活の部室の前で立ち往生し、初めて先輩に声をかけられた瞬間である。

入学して二日目、昨夜開けたピアスは、彼に金属アレルギーと、教師から注意を受けるという試練を与えてくれた。

さらに、おまけで先輩にも怒られるものとも知る。

『ピアス、せっかく開けただろうがふさいでもらう。この部に入りたいならね。早速校則違反な君は、入ってもらいたくない。』

その男は、冷ややかな目付きで嵐をみながら、部室の中に入っていった。

嵐は、そのドアが閉まるのを確認してから、慌ててピアスを取った。

若干膿んでいたため、痛みがあったがここで挫折するわけにはいかない。

明らかに校則違反の容姿のやつにいわれた事は府に落ちないが、ここは我慢だ。

『だって…。』

彼は呟いた。

息を吸い込んで、吐く。気持ちはひとつ。


『俺、バンドするんだもん!!』

少しだけ熱をもったピアスを握りしめ、そっとポケットにいれた。

微かに新しい制服の匂いがポケットからした気がした。