使者の黙示録
野瀬の左側にはアーケードの通りがあり

団司は野瀬の右側にいる。


冷静に考えれば分かることだが

団司が野瀬の後をつけてきたのであれば

野瀬と同じくアーケードを通るため、野瀬の右側ではなく左側にくるはずである。


それが瞬時に理解できなかった野瀬は

自分がどれほど冷静さを失っているかを思い知る。


(いかんな。焦るな、落ち着け)


野瀬は、灰となっていない部分が少なくなってきたタバコを、ゆっくりと味わいながら

自分自身にそう言い聞かせる。


考えてみれば、この状況は団司のことを直接知るチャンスだ。

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