side:Jun Kusakabe



ぼくは水が入った洗面器を持ち、本来は祈(イノリ)と自分の部屋である寝室へと足を運んだ。

というのも、今はわが子、祈が助けた女性がぼくらの敷布団を占領しているからである。


ぼくは眠っているかもしれない女性に遠慮しながらも、中に入る許しを得るため、ごくごく小さくノックした。

自分の家なのにノックをするというのもおかしな話だが、かといってなんの合図もなしに勝手に部屋の中へ入るのは気が引ける。


今は見知らぬ女性がいるのだ。それも仕方ない。

ふと頭に過ぎったおかしな考えを取り消して、心の中で自分にそう言うと木目調の扉についている取っ手を掴み、開ける。


すると廊下から漏れる光が眩しいのか、大きな目をすぼめてぼくを見つめる女性がいた。

彼女はどうやら目を覚ましたらしい。


どこか悲しげな表情は今も変わらないが、紫色の唇は紅色に戻りつつあるし、真っ青だった顔色も少しずつ赤みを取り戻している。

大きな目が瞬きを繰り返すたび、長いまつげが揺れる。

彼女はぼくが思ったとおり、とても可愛かった。



とりあえず、彼女の体調が良くなったことに、ほっと胸を撫(ナ)で下ろし、あらためて寝床についている彼女の姿を、部屋全体を通して見てみる。


すると、なんだろう。

この部屋に彼女がいるということに少しも違和感を感じない。それどころか、とてもよく馴染んでいるように思う。


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