マスカレード【仮面de企画】
壁際の淑女たち
彼は退屈していた。


最初にこのイベントを思いついた時には、いい考えだと思った。

仮面パーティー

クリスマスシーズンのチャリティイベントとしては洒落ているし、この鹿鳴館倶楽部の会員の多くは、多額の小切手を募金することだろう。

たとえそれが、自分達がセレブと呼ばれる階級であることを誇示するためだったとしても。


一晩辛抱して俗物たちの相手をするだけ

そうすれば、多くの恵まれない子供達に高い教育を受けさせてやれる。

自らの手で未来を掴むチャンスを与えてやれる。


そろそろ、パーティーの主催者として会場へ行く時間だ。


会場へ行く階段を上りかけた時、彼は階段下の壁側に立つ二人の女性に気づいた。

二十代前半というところだろうか、仮面はまだつけていない。


一人は背が高く、ファッションモデルのような細い体だ。

胸元のカットが深い、紫色をベースにしたサイケデリックな渦模様のロングドレスを着ている。

髪は夜会巻き風のアップで、長い首にかけられたシンプルなゴールドのネックレスがよく似合っていた。


少し背の低い方は、おとなしめのホルターネックのロングドレス。アイボリーホワイトの上品な色合い。

もっとも、着ている本人の方は『おとなしめ』とはほど遠い、グラビアアイドルも真っ青のセクシーボディだ。

柔らかいウェーブの髪はド派手な金色。

メイクも派手目で、それが妙に似合っていた。別の女がしていたら『ケバい』と言われることだろう。
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