森林浴―或る弟の手記―
一冊目





私の姉は、一言で表すなら、「美しい」という言葉しか浮かばない女性でした。


それは、良くも悪くも、で簡潔に述べるならば、それしかない女性なのです。


私には姉が二人おりましたが、一人は一昨年、事故で亡くなりました。


前述の姉と亡くなった姉は双子としてこの世に生を受けましたが、神様の悪戯かその容姿はちっとも似ておりませんでした。


一人の姉佐保里は美しく、もう一人の姉香保里は醜女だったのです。


並んで写る写真など、香保里姉さんが不憫過ぎてしまい、見れるものではありませんでした。


佐保里姉さんははっきとした聡明そうな瞳だったのに反し、香保里姉さんは酷く腫れ上がったかのような瞼をしていて、

鼻だって、佐保里姉さんが筋の通った高い鼻なら、香保里姉さんは上向きの不恰好な鼻でした。


佐保里姉さんは小柄で病弱を思わせる華奢な身体。
香保里姉さんは上背も高く、骨太な逞しい体型。


全てが正反対に生まれてきてしまった二人なのです。


それは、外見だけでなく、内面にも言えることでした。





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