アザレア
いけない事だと、判っていた。
家庭を持った相手だと知りながら、関係を続けるだなんて。

モラルに反していると思う度、苛み苦しんだ。


――それでも誠に従ってしまったのは、決して成り行きだけ……とは言い切れない。

そんな私を知ってか知らずか、誠は私を優しく扱う。


始めは数日置きだった社長との行為も、いつしか連日になり――今では一緒に暮らしているのは私だと錯覚してしまう程に、日常の大半を共に過ごしている。

誠に与えられたマンションの一室は、今や体を重ねる為だけに存在する場所となっていた。


『帰るか』

私の部屋に“来る”のを、そう表現してくれる事だけで、泣きたいくらい嬉しくなった。

――禁忌を犯していると、知りながら。
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