アザレア
ある意味、俺はこの時を待っていたし、狡いようだけど、何も気付かないままでいて欲しくもあった。


でも、もう潮時なんだ。
他の誰でもない、俺がメイを閉じ込めていたのだから。


だったら――せめて、この温もりを忘れないうちに。


「……連絡があった」

「連絡? 社長に、ですか?」

「あぁ」

「……何故、社長に?」

宥めたかったのはメイじゃない、――俺自身だ。



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