蜜色オフィス


「部長が一課つれてこの子のお店に行くらしい。
新しく開拓した会社の経営陣の接待で。
一課が全員行くなら、沖田も顔出した方がいいだろ」
「……はめたな」
「親切心だろ」


不愉快そうに顔を歪めた沖田さんの手から、宮坂がカードキーを抜き取る。
そして、私の肩を抱いて自分の胸に押し付けた。


「み、宮坂……?」
「ここ、部屋代は前払いらしいね。
せっかくだから、これは、俺が使わせてもらう」
「あ、おい!」
「どうせ経費で落とすつもりなんだろ」


舌打ちした沖田さんの腕には、“瑞穂ちゃん”が絡み付いてる。
そんな瑞穂ちゃんに、沖田さんは諦めたのか軽いため息をついてから笑いかけた。


「じゃあ行こうか。瑞穂ちゃん」
「部長によろしく」


宮坂の言葉に顔をしかめた後、沖田さんが背中を向けた。


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