蜜色オフィス
◇「……眠れそう?」



「……衣。芽衣!」
「え……、あ、ごめん。なに?」


ハっとして顔を上げると、しかめっ面の梢と目が合った。


「チキンの照り焼き見つめてぼーっとしてれば、誰でも声かけたくなるでしょ」
「あー……、ごめん。そんなにぼーっとしてた?」
「してた。っていうか、今日おかしいよね。
仕事中も、心ここにあらず、みたいな感じだったし。
宮坂が午後出社だからってだらけすぎ」


ふぅってため息をついてからカツ丼を食べる梢に、苦笑いを作る。

今日、宮坂は営業先に立ち寄ってから出社予定だから、午前中はいなかった。

だからってわけでもないけど、空っぽの隣のデスクをチラチラ見ながら、昨日の沖田さんとの話を思い出したり、考えたりして……。
そのせいで、いつもはしないような入力ミスをしちゃったりして、慌しく午前中を終えた。

ミスしたんだから、凹むべきなのに。
仕事の事を考える余裕もないくらい、頭の中が沖田さんの話でぎゅうぎゅうだった。



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