蜜色オフィス
◇「もう、大丈夫だから」


分厚いドアを、宮坂が3回ノックすると、中から「どうぞ」って声が聞こえた。

ドアの向こうに広がるのは、初めて見る社長室。
ワインレッド色の絨毯と、濃いブラウンで統一された本棚やカウンターテーブル。

シックでおしゃれな部屋は、社長のイメージとぴったりだった。


「悪いね、早川さん。急に呼び出したりして。
残業手当つけといてやってくれ。宮坂課長」


私たちが来るって分かっていたからか、社長は応接用のソファーに座っていた。
"課長"って部分を強調して言った社長に、宮坂は顔をしかめる。


「……茶化さないでください。社長」
「別に茶化してるわけじゃないよ。本当の事だろう。
課長を課長って呼んで何が悪い」
「だとしても、社長の言い方はからかってるようにしか聞こえません」
「それは、宮坂課長が私の言葉をひねくれて受け取るクセのせいだろう。
まぁ、とりあえず座りなさい。早川さんもこちらに」
「は、はい」



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