マンションに近付くにつれ、微かな希望に胸が騒ついた。


もしかしたら……


隼人が先回りして、部屋に来ているかもしれない。


『何やってんだよ!遅いよ』と言いながら、私のおでこをコツンとこ突くかもしれない。


自然と、早足になる。


いつものように、マンションそばの住宅街の空き地に路駐(路上駐車)しているかもしれない。


急がないと!


――が、そこに隼人の姿はなかった。


辺りをキョロキョロ見渡したけど、やっぱり隼人の姿も車も見当たらなかった。

――…隼人。


落胆したまま、玄関のシリンダーに鍵を差し込んだ。

部屋へ入るなり、びしょびしょの服を脱ぎ捨て、頭から熱いシャワーを浴びた。


さっきまでの二人のやりとりが鮮明に思い出され、堪らなく胸が苦しくなった。


頭に浮かぶのは、これまでの隼人との思い出ばかり。

不思議と……


隼人の嫌なところは何も浮かんでこなかった。



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