愛を餌に罪は育つ
【第一章】

見知らぬ顔

升目がある白い板には何の飾り気もない電気が取り付けられており、それは見覚えのない天井だと気が付くにはそう時間はかからなかった。


特に変わったところもない天井をぼーっと見つめ続けた。


目を覚ましたはいいが、何故か全身が怠くまだ体を動かす気にはなれなかった。


そんな私に気付かず、隣では私の手を痛いくらい強く握りしめ嗚咽を漏らしている男性、見てはいないがおそらく男性であろう人物が泣いているようだ。


左に視線を向けると点滴の袋がぶら下がっており、袋から伸びている管は私の腕に医療用のテープで固定されていた。


痛みはないが、腕には針が刺さっており、一滴そしてまた一滴と液体が規則正しい速度で落ちている。


反対方向に目線を向けると、私の右手に男性がおでこをつけ、さらさらの黒髪が鼻をすするたびゆらゆらと動いていた。



「いい加減痛いです」



そう声をかけると男性は勢いよく顔を上げ、目を見開き驚いたかと思うと今度は力強く私の体を抱きしめてきた。


激しく泣き出した男性にかける言葉も見つからず、彼に体を預けた私は暫く外の景色を、綺麗な夕日を眺めていた。






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