わかれあげまん
キ ラ キ ラ



「・・・」


どう返せばいいのか困惑のままに、沈黙が時間を押し流していく。


と。



「なあ。…聞いてる?」



柚はまた竦みあがり肩を揺らした。


なぜなら哉汰の声がさっきよりも少し距離をつめてきたから。


しかもなんだか少しねだるように甘い。


ちょ、……ま、まずいって、柚。


ジワリと温度を上げた、自分の頬の熱を感じ、柚は慌ててブルブルと頭を振った。


「…あ、あの…、ごめん…無理。」


「…なんで。」


「何でってあの、…だって、今あたし、ちょっとフツーの精神状態じゃないし。…男の子と二人にきりになっちゃマズイ…と。」


「・・・ふーん。あんた今、フツーじゃないんだ。」


「!!」


思い切り墓穴を掘った感はあったが、それでも何とか柚の思いはブレなかった。


「と、とにかく、今日は付き合えないから!」


「…いいから。」


「ひえっ!!」


いきなり左の手首をスッとつかまれ上に引き上げられた柚はビビッて悲鳴を上げた。


「ちょっ…ふ、藤宮く…!?」


「行くぞ。」


哉汰の方も立ち上がり、ピロティの通路の方へと柚を導いた。


実は最初からずっと柚の姿が見えていたんじゃないかというほど、機敏なアクションだった。


引き摺られるような勢いに、柚はあわてて足元に置いた鞄のストラップを肩に担ぎ、つんのめりそうになりながら哉汰に続いた。


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