運命のヒト

繋いだ手の先



部屋に戻ると、シロはリビングのラグマットの上でくつろいでテレビを見ていた。


「美園も見なよ、すげーおもしろいから」


そう言って隣にあたしを座らせる彼は、すっかりいつもの様子。さっきあたしを押し倒したことなんか、嘘のように。

いや、あれは押し倒したとは言わないのか。

でも、じゃあ、何だったんだろう。


「シロ、さっきのは……」

「あっ、ほらほら! この芸人」


テレビから目を離そうとしないシロに、あたしはあきらめて言葉を飲みこんだ。


本当は……聞きたいことは、山ほどある。

なのに、はぐらかされるとそれ以上聞けないあたしがいるんだ。

下手に深入りしようとしたら、シロはここを去っていくんじゃないか。そんな気がして。
< 124 / 415 >

この作品をシェア

pagetop