セックス·フレンド【完結】
epilogue
頬にくっきりと涙の跡を残したまま、安らかな寝息をたてる彼女の額にそっと唇を押し当てると、俺はベッドを抜け出した。


さっきから、悲鳴のように鳴り続けている携帯電話の電源を落とし、タバコをくわえる。


今頃、恋人であるはずのあの子は泣いているだろう。


今日は、あの子の誕生日。


俺と同じ大学へ行くために必死に勉強し、同じバイト先を選んで働き、俺だけを見つめてくれる、いじらしい恋人。


純粋で、控えめで、そんなあの子に不満なんかあるはずもないのに…。


ひどいことをしていると思う。
最低なやつだと、自分自身が嫌になる。


でも、どうしようもない。


俺は、あの子を愛せない。


なぜだろう?


なぜ、俺の腕の中で、他の男の名前を呼ぶような女に心を奪われてしまったのだろう。


わからない。まったくわからない。


でも、好きなのだ。たまらなく。


気の強いところも、痩せすぎてあばらの浮いた体も、他の男を思いながら流す涙でさえ、愛おしくてたまらない。


彼女が必要だと思う。


俺だけを見つめてくれるあの子よりも、ついさっきまで、俺の腕の中で泣き乱れていた年上の女のほうが大切だなんて、どうかしている。
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