秘書室の言えなかった言葉

 英治 side

自分で言うのもどうかと思うが、正直、俺はモテる部類に入ると思う。

だから、よく告白をされる。


17時を回り、社内に残っているのは、残業をしている人達だけ。

人気の少ない社内を歩いていると、今日も捕まってしまった。


「好きです……。あの……」


顔を赤らめ、目を潤ませ、そして上目遣いで俺を見ている、この子。

どこの課の誰なのか、全く知らない。

一般的に見たら可愛いだろうし、こんな表情で、しかも可愛い子に告白されたら、少しは嬉しいと思うのだろうけど……


正直、俺はなんとも思わない。


だけど、もし、アイツにこんな表情で“好き”なんて言われたら……

人目なんて気にせずに、抱きしめてしまうかもしれない。


告白されながら、別の女性の事を考えていると


「私と付き合って下さい」


と、言われる。

だけど


「ありがとう。だけど、僕、君の事よく知らないから。ごめんなさい」


考える間もなく、そして、表情を変える事なく答える。

だって、どんなに美人でも、どんなに可愛くても、俺は付き合う気はない。

アイツじゃなきゃ……


告白を断ると、女性社員は俺の前から走り去って行く。

その後ろ姿の先に――…


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