太陽と雪
それから時は過ぎて、コンテスト前日になった。

今日はいつもより早めに寝ようかしら。

そう思いながら、ディナーのシメのデザートに手をつけていたときだった。

「ごめん。
姉さん。

コンテスト前日なのに」

麗眞が神妙な面持ちで食堂へとやって来た。

「何よ。
どうしたの?」


「姉さんに、ずっと隠していたことがあった。
ごめん。

今から話すからさ、俺の部屋来てよ」

言われるがままに、麗眞の部屋に行く。

麗眞の部屋は相変わらず、高級ホテルの一室のようなシンプルな部屋だ。

この部屋に、しょっちゅう想い人の椎菜ちゃんを連れ込んでいたのか。

「椎菜にしか欲情しないから、手なんて出さないよ。

いつまでも扉の前で佇んでないで、早く入ったら?姉さん」

あのテーマパークでのホテルで盗音機を用いて盗聴した会話を聞く。

椎菜ちゃんと、美崎との会話だ。

まさか……この間の株価の暴落って……最初から美崎によって仕組まれてたってこと?

美崎……。
貴女どうして……そんな変わっちゃったの?

「麗眞。

貴方……当日、コンテスト会場に警備員として潜入しなさい。

怪しい動きがあったらすぐ、連絡するのよ」


「言われなくても潜入するよ。

参加する予定で優勝候補の椎菜が心配だしね。

警備員として入る旨は、運営側には伝えてあるし問題ない」

やっぱり、心配なのは自分の大事な大事な愛しい女の子のことですか。


っていうか、私より椎菜ちゃんなの?
今この状況で?

もう。
相変わらずの溺愛ぶり。

この間のテーマパークのホテルの大浴場でのこと。

頬を赤らめながら麗眞の話をしていた椎菜ちゃんの姿が思い浮かぶ。

お祭りのとき、ヨリを戻したのかは聞かないでおくけれど。

戻してないなら早く戻せばいいのに、とはこの場では言わないでおいた。

もちろん、椎菜ちゃんが隠す秘密のことは、自分の胸に秘めたままにしてある。

私が伝えては意味がない。

麗眞が自分で気付くか、椎菜ちゃんが自らの口から話す。

そのどちらかでないと意味がないのだ。
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