太陽と雪
初めて見る本物のスタンガンに、少しの間、目の前が真っ白になった。


「高沢……。
あれが……?」


「姉さん、スタンガンも知らないのかよ」


「美崎……何してるの?
危ないわよ……」


美崎が真っ先に、スタンガンを持つ専属医師に飛び掛かっていった。


「美崎さま……!」

相沢さんが、泣きそうな顔をして美崎の後を追おうとした。

そのすきに、高沢が後ろから近付いて頸動脈に何かの注射を打つと、城竜二の専属医師はその場に崩れ落ちた。


「なっ……」


「平行感覚を失わせる薬です。

美崎さまが彼に飛び掛かっていった際、美崎さまの服のポケットから落ちたのでございます」


「当たり前でしょ?
一応ね?

獣医だから。

医療についての知識も多少はあるのよ」



パパと麗眞が協力して、とりあえず現地の警察へと連行した。



「ふう。清々したわ。

これで、マシな専属医師を雇える。

私、アイツにしょっちゅう寝込み襲われそうになったんだから」

その台詞を聞いた相沢さんの顔は、蒼白になっていた。

今の彼の耳には、何を言っても届かなそうだなと感じた。


「彩。
大丈夫?」


「ママ……」



「なんか……ごめんなさいね?

ちゃんとしたこと、伝えなくて。

だけど、このことは彩が自分で乗り越えるべきだと思って」



「ううん。大丈夫。

心配ありがと、ママ。

ママもパパも麗眞も高沢も矢吹も美崎もいるし。

そんな何日もヘコむわけ、ないでしょ?」


「それでこそ、彩お嬢様です」



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