太陽と雪
「ま……まだ見るの?
昨日だって大量に買ってたじゃん?」


「麗眞!
一言多いわ!

そんなんじゃ椎菜ちゃんに嫌われるわよ?
私は、ただ覗いているだけなの」


「じゃ、私は先に左隣の店に行ってるから」


それだけを言い残して、私は矢吹と共に隣のお店へ。

「ホラ、早く付いてきなさいよ!
遅いのよ……」


「お嬢様……
よろしいのでございますか?
このような店に、私が入っても……」


「今更何言ってるのよ。

髪のセットやらメイクやらしてくれるのは貴方なんだから。

いてくれなきゃ困るの」


「素直でございますね、彩お嬢様。
いつもそうであってほしいものでございます。

その方が気品があって素敵です」


そう言いながら、店のドアを開けてくれた矢吹。
赤いであろう顔を隠すために、店内に目を向けた。


「すごい……」


化粧品やらバス用品がかなり種類豊富に取り揃えられている。


「こちらは、ジュリエットの家の菜園をイメージされているようですよ」


化粧品だけでなく、石鹸や香水まで豊富に揃えてある。


「彩お嬢様。

1品だけ、私のセレクトでもよろしいでしょうか。

私のささやかなワガママ、聞いてくださいますか?」


な……何よいきなり……

まあ、何だかんだ言って、結局メイク担当は矢吹だし……


「好きにすればいいじゃない。

貴方に任せるわ。

貴方の見立て、センスいいから好きよ」


「感謝いたします、彩お嬢様」


しばらくして、会計から戻ってきた矢吹。


「あ!
矢吹!
ちょうどいいところに。

この近くに銀行あるみたいだし、あと10万ほど下ろしてきて。

そうじゃないとこのカゴの中のもの、全部買えないじゃない」


カゴの中身を一目見た矢吹は、呆れたようにため息をついた。


「お嬢様。

一旦、頭を冷やしてくださいませ。

しばらく経ってからもう一度、本当に必要なものなのかどうか。

それを考えることも大切でございますよ」


矢吹にそう言われて、半ば呆然としている間に、カゴを奪い取られた。

それ以降、そのカゴは私の目の前に現れることはなかった。


そうして、私と矢吹は、店の外のベンチで退屈そうに座っていた麗眞と、それを見守る相沢さんの元に戻った。


パーク内の乗り物を再び満喫していたら、夕方になっていたので、ホテルに戻った。
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