囚われジョーカー【完】




閉じた瞼の奥で、過去の記憶が蘇ってきた。

それは、紛れもない。


三浦さんと出逢った日の記憶。鮮明に映し出される記憶の映像に、頭の中で自嘲的な笑みが浮かぶ。



後悔後悔言ってるくせに、あの日出逢えたのは「奇跡だ」なんて。呆れも通り越して滑稽だとさえ思う。




テレビの砂嵐が頭の中で流れ、どんどんはっきりとしていく記憶の渦に私は身を投じた。




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「菫ちゃん、3番テーブルの片付けお願ーい。」

「あ、はい。」



明日香さんの忙しそうな声に返事を返し、私は言われた通り3番テーブルの片付けを始めた。


さっきいたのは確か高校生の女の子2人だった。可愛らしいティーカップと、ケーキのお皿を片付けていれば。




心地良いカウベルの音が店内に響き、それは来客を知らせていた。





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