囚われジョーカー【完】

━violet━




「菫ー…、と。明日香ちゃん?」

「あ、こんばんは店長ー。」



店内から顔を出したのは珍しくシンプルフレームの眼鏡をかけた叔父さん。普段はコンタクトなのに、今日は眼鏡らしい。


叔父さんは明日香さんにひらひらと指先を振って挨拶を返すと、その視線を私へと流す。




「サボると姪でも減給するよ。」

「え、嫌。」

「早く着替え。明日香ちゃん、どーぞゆっくりしてってね。」

「はい是非!店長のカフェラテ最高なんで。」




仲良さげに和やかな空気で会話を交わす二人を後目に、私は裏口へと歩を進める。


叔父さんが乱入して来てしまった以上、あの話は一時中断という形になってしまった。



これこそ胸に蟠りが出来てスッキリしないままじゃないか。


深く溜め息をもらし、裏口のドアを開けてスタッフルームに入れば。



「怒られちゃった?」

「…少し。」

「あはは、ドンマイ。」




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