初昼の儀式
 今年の夏は暑い。厚いというのでも熱いというのでもいい。篤いという字でさえなければ構わん、腹が立つほどに熱く、このか弱い体はちょろりと買い物に出るだけで消耗が激しく、頭痛と吐き気というおまけまで付いてくる。
 一年ほど前から私は書店でアルバイトをしている。今年になってからは、週に5日で1日7時間。1年留年して、大学5年の私に必要な単位は「アズユーライク♪」の英文学一つに加え、卒論だけなので思う存分働ける。南大沢駅の目の前にあるショッピングセンターの最上階、そこそこに大きな本屋で、専門書の品揃えは地域随一だ。
 店長はアルバイトの私にも、きちんと担当を持たせてくれる。編集者の人と名刺交換をしたり、フェアと銘打ってポップを作ったり本を陳列したりが、いちいち楽しい。
 決まった時間に起きて決まった時間まで仕事をし、決まった時間に家に帰り決まった時間に食事をする。自由になるお金は増えてゆく。好循環の流れで充実の一途をひたすらに辿る生活。まっとうな毎日が続いていることが嬉しかった。
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