初昼の儀式

 高校2年の時、トラウマというSNSサイトに登録してみたことがある。同年代が多く集うその場所で、日記やチャットをする事が思いの外楽しく、毎日学校が終わると、パソコンに向かう日が続いた。
 
 りょうもそこの住人で、当時は絡みらしい絡みと言えばチャットで1度か2度喋ったくらいなのだけれど、その時に明かした私の本名をりょうは覚えていた。
 
 私は彼の日記を好んで読んでいた。バイオリンへの情熱、精神の病にかかって苦しい状況、自分がいくら愛を注いでも、同じ様に愛を注いでくれない両親の事が、そこには綴られていて、彼の文章は、今までに私が見たことのない類のもので、何処か愛に溢れていて、でも鋭くもあり、まるで日差しの中に光を放ち続けながらぶら下がる、氷柱のような文章だと私は思った。
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