桜花~君が為に~

第二話



ずっと、憎い人がいる。
ずっと、恨んでいる人がいる。

あの日から・・・

「よし・・・」

月が高く空に上るころ
私は昼間手入れをした父の形見である小太刀を手に立ち上がった。

薄暗い廊下を歩いていく
今夜は満月なおかげで、灯りはなくても
月の灯りだけで何とかなった。

「何を、している」
「ヒッ!!!」

突然後ろから声をかけられ
変な声が口からでる。
肩がはねた。

「へ?」

下に向けていた視線を上げてみると
其処には、私の頭の上に手を乗せ微笑んだ斎藤さんの姿があった。

「・・・なるべく、はやく部屋にもどれ」
「え?あ・・・はいっ」

一度私の頭を軽く撫で
斎藤さんは私が来た方へと歩みを進めた。

しばらくの間撫でられた頭をおさえて惚ける。

「ぁ・・・駄目駄目、しっかりしなきゃ」

我にかえって
二度ほど自分の頬をぱんぱんと叩く。
それから再び沖田さんの部屋へと歩みを進めた。

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