あの子の好きな子

教えてください




【教えてください】




もともとそんなに積極的ではない私の性格と、広瀬くんの人を寄せ付けないオーラなどなどが影響して、しばらくは声をかけられなかった。ちょうどそんな時に席替えで隣の席になってからも、初めてまともな会話を交わすのに一週間かかった。今日降りそうだね、と言ったらそうだな、と返してくれたので、それから毎日毎日、今日の天気の話をした。

「今日は雲が一つもないね、広瀬くん」
「・・・」
「昨日は曇りだったけどね」
「・・・」
「明日は雨かなあ・・・」
「・・・お前、よく飽きないな」

広瀬くんが初めて心を許してくれたと感じたのは、あのピーカン晴れの日だった。いつも、ああとかうんとか適当な返事とあくびしか返さなかった広瀬くんが、私の顔をまじまじと見ていた。

「な、なに」
「毎日、毎日、くそつまんねえ天気の話して。別に面白い反応も返しちゃいないのに、飽きもせず来る日も来る日も」

初めて長台詞を喋った広瀬くんは、思っていた以上にトゲのある話し方をした。広瀬くんは、眠そうな二重まぶたをした優しい顔立ちの割に、親しみにくいオーラを放っている。そのオーラはこのトゲトゲしさからくるのかと思った。

「何がしたいんだよ。お前、頭おかしいんじゃないのか」
「あ・・・わ、私・・・」

散々なことを言われているのに、広瀬くんがやっと自分を見せてくれた気がして、私はうれしい気持ちでいっぱいだった。胸が高鳴る。心臓の鼓動が加速する。加速して、加速して、私は、口走った。

「私、広瀬くんのこと・・・!」

何を言っているんだろうと思った。広瀬くんのことがなんなんだろう。突然大きな声を出したので、広瀬くんが驚いて目を丸くしている。めずらしい表情だ。「私、○○くんのこと・・・」なんていう意味深なフレーズが飛び出したもんだから、近くにいた何人かがこっちに注目しているのがわかった。

「ひ、広瀬くんが・・・その・・・私・・・」

引っ込みがつかなくなって、とにかく何か言わなければと考えた。広瀬くんのこと、広瀬くんのこと・・・


< 2 / 197 >

この作品をシェア

pagetop