あの子の好きな子

写真部事件




【写真部事件】





「あれ?お前、帰宅部じゃなかったんだ」
「違うよ、知らなかった?」

たまたま教室の前を通りかかった部活の後輩が挨拶をしてきて、それに返事をしたら、隣にいた広瀬くんが驚いた表情をしていた。

「一応、1年生の頃から入ってるよ。写真部」
「写真部?そんなのあったっけ」
「あるよひどいなあ。まあ、ゆるゆるのぬるぬるな部だからあんまり活動してないけど」

部員も1年生3人、2年生4人、3年生2人の計9人。部の存続ギリギリだとかアウトだとか、とにかく危ない人数しかいない。しかも特に熱心な写真好きの部員がいるわけでもなく、集まれる部員が多い日に適当に集まって適当に撮影して適当に現像して適当に部展を開く、ひどい部だった。しかも現像と言っても暗室があるわけでもなく、ただデジカメプリントをするという軽いノリのものだった。もはやデジカメ同好会だ。

「学祭何かやってた気配ないけど」
「いや・・・うん。一応やってたみたいだけど・・・私は参加してない」
「ふーん。幽霊部の幽霊部員なのか」
「でも、週に1回はちゃんと行ってるよ」

比較的金曜日が集まる部員が多いので、私は毎週金曜日は部室に顔を出すことにしている。さっき通った1年生は全員参加しているし、同じ学年の子も必ず来る子が多いから。

「広瀬くんは帰宅部だよね。1年生から?」
「ああ」
「入ろうと思わなかったの?」
「面倒臭いから」
「そっか・・・」

それなら、うちの写真部なんてぴったりなのに。もしも広瀬くんが写真部に入っていたら、もっと前から仲良くなれたのかな。何かがどこかで変わるだけで、運命って変わるものだなあ。


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