あの子の好きな子
博物館事件
【博物館事件】
肉まんを一緒に食べたあの日から、私の頭の中では「早くこいこい日曜日!」というフレーズばかりが繰り返されていた。
「あゆみ先輩!」
そんな浮かれ気分の中、もう一つの懸案事項のことなんてすっかり忘れていた。廊下で加奈ちゃんに会うまでは、すっかり。
「あゆみ先輩、なんかすごく久しぶり。どうして部活来ないんですか!」
「あ…なんか色々バタバタしてて」
「そうなんですか?今週は来ます?」
「いや、今週もちょっと」
「そうですか…」
加奈ちゃんは、しょんぼりと寂しそうにしてくれた。本当にかわいい後輩を持ったと思う。
「健人がすねてるんですよ。あゆみ先輩が来ないから」
「え」
加奈ちゃんから出たその言葉に、少しドキっとした。辻くんの話によれば、加奈ちゃんは辻くんが好きで辻くんは私に興味があるらしい。だから加奈ちゃんにとって私は、私にとっての久保さんみたいな存在ってことになる。もし本当にそうだったら……加奈ちゃんと今までみたいに、うまく話せる自信がないよ。
「…先輩。今もう少し話す時間ありますか?」
「えっ。う、うん、あるけど…」
「よかった。ずっとお話したかったんです」
加奈ちゃんはにっこり笑った。私はなんとなく気まずい思いを抱えたまま、教室前の腰掛けに加奈ちゃんを案内した。