「おはようございます」
 

次の日の朝、いつものように素知らぬ顔で出勤すると、啓太さんはもう出社していた。


「相澤、昨日はお疲れさま」

「いえ、お疲れさまです」
 

こんな風にしか会話を交わすことを許されない私達。
私の体の隅々まで知り尽くした彼は、今は赤の他人。


「おはようございます。相澤さん、足、どうですか?」

「おはよ。もう大丈夫。ありがとう」
 

私の向かいの席の滝本君は、あんなに働いたのに少しも疲れた顔をしていない。

 

滝本君を見てふと思う。
 
彼が私の足に気づいてくれたおかげで、啓太さんは嫉妬してくれた。
こんなことで感謝する私は、きっと変だ。

 
だけど、こんなことでもなければ、啓太さんの気持ちを確認する勇気さえない。

「愛情なんてない」と言われたら……と思うと、怖くて聞けなかった。


でも、滝本君への激しい嫉妬のおかげで、愛されていることを実感できた。