啓太さんとの関係は、別れもなければ進展もなかった。

 
ただ、木曜が来るたびに体を重ね、会社で仕事の会話を交わすだけ。
しかも、仕事の繁雑期になると、一か月も会えないこともあった。
 

彼は家庭の話を徹底的にしなかった。

奥様との仲かどうなっているのか。
私と一緒になるつもりはあるのか……。

そんなこと一切、口にしない。
 

だけど、私が知りたかったのは、その部分だ。
 
もう、愛を囁かれるだけで満足できなくなってきていた。
全部が欲しい。彼のすべてが。

 

未来に不安を持っていると匂わせる度、「愛しているのは、彩音だけだよ」と耳元で囁くだけ。
決定的に欲しい言葉は、彼の口からは出てこなかった。
 

そんなのはずるい。

愛をぶら下げて、私の体を貪るのはやめて欲しい。
 

だけど……どうしようもなかった。
啓太さんがすべてになってしまっていた私には、「別れ」という選択肢がなかったから。