カエルと魔女の花嫁探し
東の国へ
       ◆   ◆   ◆   ◆   ◆

 北の国で何人もの乙女とカエルを引きあわせててみたが、思うようにはいかず、今度は東の国へとホウキを飛ばした。

「国を変えれば人も変わるわ。次はきっといい娘が見つかるわよ」

「ええ、そうですね……はあ……」

 元気づけようとするセレネーに抑揚のない返事をした後、カエルからため息がこぼれる。

(何度も期待を裏切られて、時には好意を持っていた娘から罵声も浴びせられて……そんな状況で落ち込むなって言うほうが無理な話よね)

 早く呪いを解いてくれる乙女を見つけなければ、カエルが体中の水分を涙で全部出してしまい、干からびそうな気がした。

 東の国にたどり着いて、即座にセレネーは水晶球を取り出した。

「クリスタルよ、この国でカエルにキスしてくれそうな、自分の家族よりも伴侶を選んでくれる、気立てのいい娘を教えておくれ」

 セレネーが囁きかけると、水晶球は淡い水色に光る。
 そこへ映し出されたのは、探検家のような服装で、森の中を探索しているメガネをかけた女性だった。

 背丈は小さく、クセのありそうな茶い髪を三つ編みにしており、ちょこまかと動く度に揺れている。
 決して美人ではなかったが、いつもニコニコ笑っており、会う人々をホッと和ませてしまうような魅力があった。

 森でなにをしてるのだろうか疑問に思い、セレネーはしばらく水晶球で様子をうかがう。
 女は歩いていたと思ったら、急に腰を屈めて藪に顔を突っ込んだり、ポケットから小さなノートを取り出し、一心不乱に書き込んだりしていた。

(この人、ちょっと変わってるわね。何者かしら?)

 セレネーが疑問に思っていると、水晶球を見ていたカエルが「あっ」と気づきの声を上げた。
< 15 / 34 >

この作品をシェア

pagetop