BLack†NOBLE
8.otto


 アリシアを隣に乗せて、深夜のローマを走り抜ける。

 この時間でなければ、観光バスの渋滞ができているだろう。

 
 世界遺産の四割がイタリアにある、それに一度はお目かかりたいと考える人間が押し掛けてくる。当然のことだ。



 俺と蔵人も、家族で色々な観光名所に訪れた。美術館、教会、大聖堂、劇場……

 父の説明は教科書よりも丁寧で長く、幼い頃はその価値もわからずに母に露天で買ってもらったジェラードの味のほうがよく覚えている。

『クロードの子供の頃ってどんな子だったの? やっぱ天使みたいに可愛かった?』


『チッ……』


『舌打ち? はぁ? 感じ悪い~。瑠威、女にモテないでしょ?』



 ローマの街並みを見ながら微睡んでいたアリシアは、眠そうな声をだす。


『おまえは、寝てろ』



『寝たら車から突き落とすでしょ? そんな性格だと、彼女できないよ。せっかく顔はクロード似でカッコいいのに、もったいない』
 
 アリシアはフンと鼻を鳴らして、少しシートを倒してから窓の外を眺めた。


『蔵人のどこがいいんだ? あんな奴の……』


< 110 / 509 >

この作品をシェア

pagetop