それはいつもとなんら変わらない、ほんの些細な螺旋の綻びの出来事だった。


『娘の命が惜しければ、21時28分、黒いアタッシュケースに一億円を用意して、T川に架かる鉄橋の中央から投げ落とせ』


夕闇を切り裂くべく鳴り響いた電話。
大学院の研究室で新たな研究に取り組んでいた私と妻は、学生時代からの友人にその事件を知らされた。


いつもとなんら変わらない、穏やかな秋の夕刻。
ゆっくりと流れる研究室の時間。
窓の外の季節は移ろいゆく。


昨日と全く変わらない、この景色を孕むこの世界で。
大事な愛娘が誘拐されるなんて。


そんな事態を誰が想像出来たと言うのか。

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大人  幼なじみ  多世界    未来  時空  記憶  真実  先生 

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