解ける螺旋

 幸せの裏の犠牲




奈月に呼び出されてやって来た結城は、奈月の後からリビングに入って来ると、ソファに座る俺を見て一瞬目を丸くした。
わかりやすい位にギョッとした後、足を踏み入れた途端に立ち竦む。
奈月に促されて再び歩き始めて近付いて来ながら、何かを探る様に俺と奈月を交互に見る。
そしてリビングの中央に辿り着くと、黙って向かい側のソファに座った。


奈月がキッチンに消えてコーヒーの準備をする音を聞きながら、結城は胡散臭そうに俺を眺め回した。
長々と、時間を掛けて。かなり遠慮なく。


まるで珍獣扱いの視線をさりげなく交わしながら、俺はただ黙って結城がどう出て来るかを待って。
奈月がコーヒーを淹れて運んで来たタイミングで、やっと結城が口を開いた。


「……先生?」

「医者の意味の『先生』なら、返事出来るよ」

「……奈月。これ、樫本先生なのか?」

「うん」

「だよな~。じゃなきゃお前に呼び出された先に愁夜がいる訳が。
……って、だったら先に説明しろよ!」


結城は力いっぱい怒鳴ると、奈月が出したコーヒーカップを慌ただしく口元に運んだ。
そして、一気に口に流す。


「うわ、あちっ!」

「言ったら混乱すると思って」


ニッコリと笑って、奈月は俺の隣に腰を下ろした。


俺は漫才を見てるみたいな二人の掛け合いに、合いの手を入れる事すら出来ず。


――それ、ホットじゃないのか? と止める間もなかった。
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