主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
『主さま…主さま…』
耳に心地よい優しく高い声が耳にするりと入って来て瞳を開けると…ものすごく可愛らしい女が、見下ろしていた。
――真っ黒のさらさらの髪…真っ白な肌に、桃色の唇…
目元がやわらかく大きな黒瞳が愛しげに見つめてきていて、主さまが眉を潜める。
「お前は…誰だ?」
『主さま…私です。息吹です』
純白の着物に真っ赤な帯…
髪には桃色の雅な髪紐を垂らし、頬をくすぐるように撫でて来て、少し悲しげに笑った。
『16になりました。これでいつ主さまに食べられても良い歳になりました。主さま…』
「い、息吹…」
頭を上げて肘をつき、上半身起き上がると、ゆっくりとした動作で息吹が赤い帯を外す。
美しく成長した息吹が食われるために自ら帯を解き、はらりと着物がはだけた時…
主さまは我を忘れて息吹を強く抱きしめた。
『私を食べてくれるんでしょう?この日のために私は貴方に育てられたのです。…主さま、今までありがとう』
「…いいのか…?」
『主さま…貴方の血肉となれるのならば、私は喜んでこの身を捧げます』
白い肌と、可憐でいて美しく成長した息吹の美貌に目を奪われた主さまは、息吹の肩を押してゆっくりと押し倒す。
「…俺が食ってしまえばもう会えなくなるぞ」
『あなたの血肉になれます。永遠にずっと…老いることもなく、ずっと一緒です』
――人間はいずれ老いて死んでゆく。
そうなる前に、1番美しい時期に食って我が身とすれば、息吹の魂とも一生一緒に居ることができる――
だが主さまは息吹の心臓に爪を突き立てることができなかった。
むしろ息吹を抱きしめられることに喜びを感じ、甘い息をつかせた。
「息吹…俺の…俺の妻になれ」
『主さま…私はあなたの食べ物…』
「そんな気はなくなった。俺に抱かれろ。お前は俺のものだ」
唇を重ねると、うっとりとした表情になって、そんな甘い表情をした息吹に見惚れた時――
「主しゃまー」
幼い声が聴こえた。
「主しゃま、しーしー!」
…まさかの夢落ち。
耳に心地よい優しく高い声が耳にするりと入って来て瞳を開けると…ものすごく可愛らしい女が、見下ろしていた。
――真っ黒のさらさらの髪…真っ白な肌に、桃色の唇…
目元がやわらかく大きな黒瞳が愛しげに見つめてきていて、主さまが眉を潜める。
「お前は…誰だ?」
『主さま…私です。息吹です』
純白の着物に真っ赤な帯…
髪には桃色の雅な髪紐を垂らし、頬をくすぐるように撫でて来て、少し悲しげに笑った。
『16になりました。これでいつ主さまに食べられても良い歳になりました。主さま…』
「い、息吹…」
頭を上げて肘をつき、上半身起き上がると、ゆっくりとした動作で息吹が赤い帯を外す。
美しく成長した息吹が食われるために自ら帯を解き、はらりと着物がはだけた時…
主さまは我を忘れて息吹を強く抱きしめた。
『私を食べてくれるんでしょう?この日のために私は貴方に育てられたのです。…主さま、今までありがとう』
「…いいのか…?」
『主さま…貴方の血肉となれるのならば、私は喜んでこの身を捧げます』
白い肌と、可憐でいて美しく成長した息吹の美貌に目を奪われた主さまは、息吹の肩を押してゆっくりと押し倒す。
「…俺が食ってしまえばもう会えなくなるぞ」
『あなたの血肉になれます。永遠にずっと…老いることもなく、ずっと一緒です』
――人間はいずれ老いて死んでゆく。
そうなる前に、1番美しい時期に食って我が身とすれば、息吹の魂とも一生一緒に居ることができる――
だが主さまは息吹の心臓に爪を突き立てることができなかった。
むしろ息吹を抱きしめられることに喜びを感じ、甘い息をつかせた。
「息吹…俺の…俺の妻になれ」
『主さま…私はあなたの食べ物…』
「そんな気はなくなった。俺に抱かれろ。お前は俺のものだ」
唇を重ねると、うっとりとした表情になって、そんな甘い表情をした息吹に見惚れた時――
「主しゃまー」
幼い声が聴こえた。
「主しゃま、しーしー!」
…まさかの夢落ち。