晴明は主さまを知り尽くしている。


…今まで主さまが食った女の数も知っているし、同様に抱いた女の数も知っている。

だが主さまが女を食う時は、妖の本能…本当に飢えている時のみだ。

気まぐれに食ったりはしないし、また食われる側も最初から最後まで一貫して、食われることの喜びを抱く、と聴いた。


主さまが息吹を食う日は一生やって来ないだろう。

それが究極の愛の成就の方法だとわかっていても、絶対にできないはずだ。


「そうかな…私ももう適齢期だしお嫁さんに行って父様を楽にさせないとね」


「私はそんなことを言っているのではないよ。今も、そしてそなたが愛しい男に嫁いだ時も、私の娘に代わりはない。そなたの婿が十六夜だったら…と思うと少々意地悪をするやもしれぬが」


「主さまと私が夫婦になるなんて有り得ないよ。主さまは気まぐれに私を拾って育てただけで…女として見てくれてないんだから」


――俺がいつそんなことを言った?


主さまはそう叫びたいのを堪えつつ、晴明から喋ることも姿を現わすことも禁じられていたので、じりじりとしながら唇を噛み締めていた。


もちろんそんな主さまの姿が見えていない息吹は、晴明の膝に上り込むと胸にしなだれかかり、甘える息吹にいらいら。


「以前に言ったと思うが、人と妖であるから、とか先に死ぬ身だから、とは考えるのはやめなさい。短くとも幸せな人生を歩んだ者も居る。私の父や母、そして雪男の父もそうなんだよ」


「…うん。父様…私、勇気を出してもう1度主さまに告白してみるね。それできっとすっきりするから、その後は雪ちゃんと道長様にちゃんとお返事しなきゃ」


「そうだな、そうしてやっておくれ。さあ息吹、風呂にでも入って来なさい。その後は私の晩酌の相手を」


「はいっ、行ってきますね」


気持ちを聴いてもらえてすっきりした息吹が風呂場の方へと消えると、主さまと晴明はしばらくの間、視線も合わせず2人で手入れされた庭園を眺めていた。


「…で?」


「………今の話…真実か?」


「あの子が芝居など打てるものか。私はこれ以上の協力はせぬ。後はそなたがどう出るかにかかっている」


「…」


今すぐにでも…

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