優しい手①~戦国:石田三成~【完】

武田信玄との決着

この城の特大風呂をすっかり気に入ってしまった桃は、夕方になるといそいそと風呂に向かい、風呂場の前までは三成と幸村がついて来てくれた。


「謙信さんが昨日身体擦ってくれた女中さんをまた呼んでくれるって言ってたけど」


「すでにご用意いたしております」


中から女中の声がして、三成がそっと桃の背中を押した。


「目が見えぬのだからしっかり洗ってもらえ」


「うん!今日もよろしくお願いしまーす」


「は、はい、かしこまりました」


ぎこちない返事に少しだけ首を傾げたが、服を脱がせてもらっている間、女中がひそ、と声をかけてきた。


「風邪を引いてしまい声が思うように出せませんのでお許し下さい」


「あ、そうなんですか?喋んなくてもいいですよ、早く治してくださいね!」


そして裸になると手を引かれて座らされ、少し熱めの湯をかけてもらって歓声を上げた。


「わあ、気持ちいい!昨日お風呂がとっても気持ち良いって言ったら謙信さんがまたあなたにお願いしてくれるって言ってくれたんですよ!これからもよろしくお願いします!」


「…」


風邪を引いたと聞いたばかりなのに一人でべらべら喋ってしまい、口を閉じると…


肩に手が添えられて、背中を優しく擦られた。

…やはり手が大きすぎる気がするが…そういう女性も居るので、特に気にせず目を閉じていると…


「…んっ」


背中側から手が前に回ってきて、布ではなく…手で洗われる。


石鹸で滑りよくなった大きな手は腰のラインに沿って動き、胸の下や谷間も丁寧に洗ってくれたが…

なにぶん変な声がつい出てしまって、口を両手で塞いだ。


太股や脚の指の間…万遍なく洗ってくれて、身体を丁寧に拭かれると浴衣を着せてくれた。


「ごめんなさい、変な声出ちゃった…」


「…こちらこそ声が出せず申し訳ありませんでした」


返ってきた声はやはりあの女中の声で、安心した桃が風呂場から出ると…


「あれ、桃?奇遇だね」


謙信の声がして、また首を傾げた。


「謙信さんもお風呂?すっごく気持ちよかったよ!」


「ふふ、よかったね」


笑っていた。
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