優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成の湯上りのその姿は髪が濡れ、よく身体を拭かなかったのか白の浴衣がやや透けて見える。


それがものすごくセクシーで、そう思ってしまった自分にも動揺しながら、桃は布団の脇に座っていた。


「み、三成さん、ちゃんと身体拭かなきゃ風邪引いちゃうよ?」


「今は夏だぞ、こんなのすぐに乾く。それより…」


――布団は二組。
これはもう形式上のものとなっているが、いつもなら“1つの布団で!”とごねて三成と押し問答になるのに、桃は自分の布団にさっさと入った。

…三成との布団の距離を微妙に作って。


「面白い間隔だな。これはそなたの心の距離なのか?」


「み、三成さん明日も早いんでしょ?早く寝た方がいいよ!」


「明日は出仕しなくていいから…遅くまで起きていられるんだが?」


「な、なに言ってるのか…全然わかんない!」


「俺が怖いのか?」


――どこか開き直った感のある三成の攻めの姿勢に、ただただ桃は翻弄されながらも背を向けた。


「怖くないもん!酔ってない三成さんは怖くないもんっ」


「恐らくそなたの苦手なあれはここは出ないはずだが…用心するんだな」


「…へっ!?」


桃の一番苦手なあれと言えば…


「ちょ、三成さん?こ、こっち向いてよっ」


「眠たくなってきたから話しかけるな」


ますます不安が募った桃はぱっちりと目が冴えてしまい、天井をぎっと睨んで怖さを紛らわせていた。


がたっ。


「ひゃっ!やっ、な、何の音…?」


…三成は背を向けたまま起きてくれない。もうこうなれば…仕方ない。


「……何をしている?」


「え?えーと…一緒のお布団に入ってます…」


ようやく寝返りを打ってこちらを見てくれた三成にほっと笑顔がこぼれる。


「だって怖いんだもん。三成さん、お願い…」


「そのお願いは何度目になるのやら…」


――ぎゅっと身体を抱きしめてきた。
胸の中にすっぽり収まってしまい、その鼓動すら聞こえる。


「三成さ…」


「これくらいは許せ。昂ぶったら…唇を許してやってもいいぞ」


…吹っ切れた石田三成は、驚異のツンデレだった。
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