優しい手①~戦国:石田三成~【完】
いつもなら出迎えてくれる桃の姿がなく、クロから降りると三成はそのまま桃の部屋へと向かった。
だが入口には…幸村が座っていて、
三成の仏頂面を見ると何故かほっとしたようにして立ち上がる。
「かろうじて殿の猛攻に耐え切ったところです。姫は…眠っておいでです」
恋敵であるはずなのにやけに素直に部屋を譲る幸村の態度は心底から安堵しているように見えた。
「桃は…何故こんな時間に眠っているのだ?」
「…お心を痛めておいでです。拙者の口からはこれ以上は…」
唇を引き結び、三成の脇を通り過ぎてゆく幸村の様子もおかしかったが、ひとまずは静かに部屋へと入ると…
薄い布団をかけられた桃が真ん丸になって寝ていた。
近付くと…頬には涙の痕があり、手には…何かの紙が握られていて、何度か手をさすってやると掌の緊張が和らいで開き、三成はその紙に描かれている絵を見た。
「…これは…」
「ん……、あ、三成さん…」
桃が起きたので、三成はその紙を布団の中に押し込んで笑顔を作った。
「昼寝していたのか?錠をつけないと謙信たちに何をされるかわかったものではないぞ」
「謙信“たち”?謙信さん以外にエッチな人居たっけ?」
笑いながら起き上がった桃の手に紙がかさりと触れて、ぎくっとなった桃は手を布団の中に隠す。
「それは何だ?」
わざと聞いてみた。
「…単なる絵だよ。珍しい絵だっから謙信さんからもらっちゃった」
…疲れ果てたようにため息をついたので、しばらくは一人にさせてやろうと立ち上がると…ぎゅっと手を握られて桃を見下ろす。
その可憐で明るさに満ちているはずの表情は…どこか思い詰めたように苦しそうにしていた。
「あのね、相談したいことがあるの。寝る前でいいから…聞いてくれる?」
「もちろんだ。桃、お前にはそんな顔は似合わない。笑っていてくれ」
「えー?私だって…悩む時だってあるんだよ?」
「風呂でも入って心も身体も解して来い。すっきりするぞ」
「うん、ありがと」
――そしてパニックが二人を襲う。
だが入口には…幸村が座っていて、
三成の仏頂面を見ると何故かほっとしたようにして立ち上がる。
「かろうじて殿の猛攻に耐え切ったところです。姫は…眠っておいでです」
恋敵であるはずなのにやけに素直に部屋を譲る幸村の態度は心底から安堵しているように見えた。
「桃は…何故こんな時間に眠っているのだ?」
「…お心を痛めておいでです。拙者の口からはこれ以上は…」
唇を引き結び、三成の脇を通り過ぎてゆく幸村の様子もおかしかったが、ひとまずは静かに部屋へと入ると…
薄い布団をかけられた桃が真ん丸になって寝ていた。
近付くと…頬には涙の痕があり、手には…何かの紙が握られていて、何度か手をさすってやると掌の緊張が和らいで開き、三成はその紙に描かれている絵を見た。
「…これは…」
「ん……、あ、三成さん…」
桃が起きたので、三成はその紙を布団の中に押し込んで笑顔を作った。
「昼寝していたのか?錠をつけないと謙信たちに何をされるかわかったものではないぞ」
「謙信“たち”?謙信さん以外にエッチな人居たっけ?」
笑いながら起き上がった桃の手に紙がかさりと触れて、ぎくっとなった桃は手を布団の中に隠す。
「それは何だ?」
わざと聞いてみた。
「…単なる絵だよ。珍しい絵だっから謙信さんからもらっちゃった」
…疲れ果てたようにため息をついたので、しばらくは一人にさせてやろうと立ち上がると…ぎゅっと手を握られて桃を見下ろす。
その可憐で明るさに満ちているはずの表情は…どこか思い詰めたように苦しそうにしていた。
「あのね、相談したいことがあるの。寝る前でいいから…聞いてくれる?」
「もちろんだ。桃、お前にはそんな顔は似合わない。笑っていてくれ」
「えー?私だって…悩む時だってあるんだよ?」
「風呂でも入って心も身体も解して来い。すっきりするぞ」
「うん、ありがと」
――そしてパニックが二人を襲う。