雨と傘と

幸葉⑥

春にいの声が聞こえて、渡り廊下にうずくまる朔ちゃん。頭を抱えて苦しむ彼は、きっと涙を流しているんだと思う。

朔ちゃんの涙を見たのは、何年振りなんだろう。

いつも感情の表現が緩やかで、怒ることなんて滅多になくて…まして泣くなんて。究極の愛情表現だと思う。その姿はまさに、兄のことを愛しているんだと全身で訴えているんだと思う。


私は妙に冷静に、泣く彼と、窓の向こうの彼を感じていた。
まるで私は蚊帳の外。


疎外感が心を蝕んだ。


二人を苦しめる中心にいるのは私なのに。こんなにも激しい疎外感は何だろう。入り込むことのできない二人の絆をまざまざと見せつけられて、私は血というモノを本気で嫌いになった。

兄弟の愛が強くて。

羨ましくて、羨ましくて、でも敵わなくて。

恐い。

私は彼らを愛せるだろうか。
これほど人を愛する気持ちを持つ二人に、私が向ける愛情は半端であってはならないと思う。しっかりとした強い気持ちでなければ、ならないと思う。

私は立っていられるのだろうか。応えられるのだろうか。


朔ちゃんが兄を敬うように。春にいが弟を慈しむように。

私は二人を愛していけるのだろうか。




血が恐い。

血が絡みついた絆が恐い。


敵わないって思ってしまう自分が、恐かった。






そして、こんなにも兄弟愛に縛られるこの二人が、可哀想に思うんだ。
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