四竜帝の大陸【青の大陸編】
「眼から出てきたんだから、涙でしょう?」

せっせと拾いながら、それを出した本人に私は反論した。
人間は液体状だけど、竜なら固体もありな感じも……。
ハクちゃんは指を1本だけ伸ばし、くいっと曲げた。
すると、私の手のひらに白い粒が一瞬で集まった。
左手で地面の粒を拾って、右手にのせてたそれが一気に山盛りになる。
山が崩れる前に、慌ててパジャマのポケットにしまった。
こんなこと出来るなら、最初に言ってくれたら良かったのにな~。
腰をかがめての地味な作業は、短時間でもけっこう辛い。

「……っ」

腰がちょっと固まって、痛い。

なんか悲しい。
腰が痛いなんて、異世界トリップ・ラブストーリーには普通は出ないよね。
ま、ラブストーリーじゃないか。
相手がちっちゃい竜だし。
ハクちゃんをちらりと見ると涙の粒(私的には涙認定)を1粒、口に放りこむところだった。

「やはりな。これはかけらだ。我の‘かけら‘」
「……かけら?」

なにそれ? 

「我の‘かけら‘。さきほどは無自覚のうちに少し崩れてしまったんだろう。存在が壊れかけたのだ。だから身体が崩れてこぼれた」

な……? 
身体が崩れて、壊れた?

「内部から壊れたために、眼から落ちたんだろう」

たっ、大変!
この粒はハクちゃんの内臓の成れの果てって事?
早く戻さないと死んじゃうとか!
きゃあ~、どうしようっ!? 

「念が強すぎだ、りこ。少々うるさい」
「何、落ち着いてるのよ! 急いで全部食べなきゃ」

ポケットに突っ込んだ手が震えた。
ああ、なんてことだろう!
 
「必要ない」

何をのんきなこと言ってるのよ!
これがハクちゃんの内臓なら、早くもどさないとっ!! 

「……朝食のくだりで再生能力が高いと言ったが。聞いてなかったのか?」
「え?」
 
言われてみれば……そんなような事を聞いたかな? 
細かくは記憶してないけれど。

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