四竜帝の大陸【青の大陸編】
「竜……よね?」

胴長のアジアっぽい龍じゃなくて、西洋の龍に見える。
さすが異世界トリップ!
竜がいるなんて……定番だよね、うん。
せっかくの機会だし、やっぱり近くで見たいし触ってみたい。
私、爬虫類は好きだし。
特に鱗のある蛇・トカゲが好き。
ひんやり・つるつるで……ううっ、あの竜が鱗系生物ならぜひぜひタッチング希望です!
不安で落ち込んでた心が、美しい庭園と竜らしき生物のおかげで急浮上してきた。
ずぶとい神経っていうよりも……精神の自己防衛機能で、私は逃避したんだと思う。

「りゅ……」

 一歩を踏み出すと同時に、驚くべき事がおこった。

「お前は何者だ? ……異界の匂いがする」

日本語……だ。 
日本語!

「あ、あのっ……えっ!?」

一瞬のうちに、竜が目の前に居た。
しゅ、瞬間移動?

「違う。普通に移動しただけだ」

わぁ、金色の眼に私が映ってる……なんて綺麗な目。
うっとりしちゃう!
いや、うっとりしてる場合じゃないよ、私!

「えっと、あのっ、ねえ! 日本語しゃべってるよね? きゃー! やったー! 言葉が通じてるよう……うううううええ~ん!」

感極まって変な声が出て、涙が噴き出してしまった。
これが嬉し泣きってやつね!
初めての体験です!

「うえっつ、うえ~……うぐうぐ! わ、わた……しここで、一人で、うう……どうしていいかわからなくて怖くて……えぐえぐっつ、ぐふっ」

多分、かなり見苦しく汚らしい泣き顔になってるはず。
涙・鼻水がどわーっと出てるし、うまく息つぎが出来なくてむせちゃってるし。
26歳の大人の女としては……女として終わった感じの有り様かも。
でもでも、止まんないっ、うれしい!
日本語通じて嬉し……げふげふっ!
うう、苦しいっ!

「すべての思考を我に向けるな、異界の人間よ。うるさくてかなわん!」

鼻が触れ合うほど、眼と眼が覗き込めるほど近くにあった竜(たぶん竜・しかも鱗系!)が、くわっと口を開けた。
かわいい歯と牙が見えた。
真珠で作ったみたいなきれいな……まるで宝飾品のような。
ああ、体もきれい。
真珠の光沢を持った純白の鱗!
触りたい、触りたい……触りたい!

触らせて~っ!!


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