最後の恋、最高の恋。
An ambiguous relation


「ただいまー」


喫茶店に行ったあと、てっきり夕飯まで一緒に食べるのかと思っていた私の予想を裏切って、坂口さんはまっすぐに家まで送り届けてくれた。

つまり今はまだ夕方で、夏だからまだ昼間じゃないかってくらい明るい。

家に上がっていくのかと思ったら、彼は車から降りずに「明日から仕事頑張ってね」とスマートに送り出してくれたから、寄って行きませんか?とも言えなくて「坂口さんもお仕事頑張ってください」と見送るしかできなかった。



「お帰り美月、学とのデートどうだった?」


私の帰りを待っていたのだろう、玄関を開けるなり勢いよくリビングから飛び出してきたお姉ちゃんが満面の笑顔で出迎えてくれる。


「宮田さんのところでパスタとピザ食べて、パジャマ3着も貰って、お茶してきた」

「あーそうか、今世間じゃ夏休みだから誠人君あの店やってるのか」

「うん、レースのストラップとコースターも貰っちゃって」

「誠人君、見た目に似合わず少女趣味だし手先器用だからねぇ……」


宮田さんのあのレースの小物たちを作る腕前は、周知の事実だったらしい。

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