犬と猫…ときどき、君

「えぇーーっ!! 胡桃先生、別れちゃったんですか!?」

「ウソっ! ウソでしょ!? あんな上玉ー!!」

「ありえない……ありえませんよ」

「す、すみません」


芹沢 胡桃《せりざわ くるみ》、二十八歳。

――ただいま怒られています。

ものすごい勢いで。


「どうして別れちゃったんですかっ!?」

「まぁ、色々とあるんですよ」

「“色々”って何ですかぁー!! だったら、私にくださいよー!!」

「えー!! それなら私だって欲しいっ!!」

「だったら私もー」


“欲しい”って、物じゃないんだけどなー……。

何を言っても解ってくれそうにない彼女たちは、同じ動物病院で働く、動物看護師――通称アニテク(アニマル・テクニシャン)。

今日も仲良しサチちゃん、ミカちゃん、コトノちゃん。


「ほらっ! あんた達!! いい加減にしなさいよっ!!」

「あぁ、マコッ!! 助けてー!!」

「胡桃も“助けてー!!”じゃないでしょっ!?」


ツルの一声で彼女達を黙らせるのは、アニテク兼、検査技師の椎名 眞子《しいな まこ》。

私の大学時代からの親友だ。

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