犬と猫…ときどき、君
「ハルキと芹沢がそんな事になってたとはなぁ……。お膳立て、いらなかったじゃねーかよ」
「ねー! 城戸ってボヤっとしてるくせに、抜け目がなかったのねー」
「でもコイツ、最初のクラスコンパの時だって、芹沢お持ち帰り疑惑浮上してたんだぜ?」
「うっそ! マジで!? そうなの!?」
別に、付き合う事を隠すつもりは毛頭ない。むしろオープンで全然オッケー。
「持ち帰ってねぇし。あの後、すぐ店戻っただろーが」
「いやいや……。だって、一時間くらい抜けてただろ?」
「一時間で何が出来んだよ。俺はそんなに早くねぇぞ」
「きゃー!! ハルキュンやらしー!! でもたくましくてステキー☆」
――でも。
「芹沢、楽しみだね☆ これで早かったら、ちゃんとみんなに報告してね! 対策を練るから!」
「……」
下ネタは、苦手だ。
「ちょっと、あんた達!! 胡桃引いてるからっ!!」
というか、お昼時の人が溢れかえる大学のホールで、そんな話で盛り上がらないで欲しい。
「おい。胡桃、固まってんだろうが」
固まる――というより、対処に困る私を見かねて、助け船を出してくれた城戸春希だったけれど、
「“く~る~みぃ~”!!」
「ハモんなっ!! あと、“くるみ”って、死んでも呼ぶな」
あえなく撃沈……。
この人達の勢いを止めるのは不可能だと覚ったのか、城戸春希は面倒臭そうに溜め息を吐き、中断していたテーブルの上のカツカレーを再び口に運び始めた。
「えぇ~!! ハルキュン冷たい~! あの合コンで、気を利かせて栗原とチェンジしてあげたの俺よ~?」
「それとこれとは別問題。あと、“ハルキュン”呼ぶな」
私はというと、キョロキョロと首振りながら、目の前で繰り広げられる、いつもにも増して激しい“篠崎軍団”の会話を追うので精一杯。