貴方に愛を捧げましょう
第二章
「葉玖」


我が名を奏でる、愛しい人の唇は。

残酷な願いを同時に紡ぐ。


「もし、本気であたしを愛しているというなら……あたしを嫌いになって」


何故、そのような事を仰るのです。

何故、突き離そうとするのです。

愛に餓える無垢な貴女は、この心を狂おしいまでに惹き付けるというのに。


「それは…──」


言葉が詰まる。

こちらを見る力強い瞳は、どんな言葉でも片時も揺らぎはしない。

人間の少女ただ一人の頑なな意志など、我が力で容易に崩す事は出来ないのか。


「由羅様……」


貴女の鋭い眼差しが、こちらを真っ直ぐに見据える美しい瞳が、堪らなく好きなのです。

獣の姿の体躯に躊躇いもなく触れる小さな手、華奢な身体、その内に在る脆く弱い心。

貴女を傷付けるであろう全てのものから、無性に護りたく思うのです。


貴女の傍に居る事が、此の上無い幸せとなるのだから。

そんな貴女を嫌うなど……出来はしない。


「そのご命令を聞き入れる事、私には出来ません」


澄んだ瞳には、自分の姿だけを映していて。

少女の瞳が驚きに見開かれる。

貴女は今、何を思っているのですか…?

我が心は貴女だけを想っています。


「その願いを叶えたくはありません」


例えこの身に何があろうと、貴女への想いを偽りはしない。





   ── 第二章 ──


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