光希が東京に行ってしまうと、私もバイトを始めた。
少しでもお金をためて、彼に会いに行きたい。



「璃音ちゃん、注文取ってきてくれる?」


私は大学の近くの小さなケーキ屋さんで働いていた。
Strawberry kissというかわいい名前のそこは、小さいけれど、温かみのあるお店だ。




「あ、楊子。来てくれたの?」


同じゼミの楊子。隣には一つ上の彼氏、要君も一緒だ。


「うん、売り上げに貢献しようと思って。」


クスクス笑いあう彼女たちが、とてもうらやましい。





会社に入社したばかりの光希は研修施設に缶詰らしく、寝る前のメールくらいしかできないでいた。


「光希さん、元気?」

「うん。でも忙しいみたい」

「へぇ、それで寂しいんだ。やっぱりね、元気ないもん」


そんなこと、自分では気が付いていなくて、驚いてしまう。


「でも、これあるじゃん」


楊子が私の左手薬指の指輪を撫でる。


「えへへ、そうだね」



忙しくなった仕事に身を委ねていると、窓越しに楊子たちが手を振って帰っていくのが見えた。

きっと私を心配して来てくれたに違いない。




ありがとう、楊子。