それから光希は金曜の夜遅くにやってきて、日曜の夜に帰っていく生活を繰り返した。
きっと、慣れない仕事に疲れているのに違いないのに。


父や母が帰ることを勧めても、頑として譲らない。
それどころか、ずっと付き添いで疲れている母を休ませてくれるほどだった。



「璃音、何か飲む?」

「うん」


私の心は晴れなかったけれど、いつしか彼が来てくれるのを心待ちにするようになった。


動かない体のせいで、天井ばかり見上げている私。その視界に彼が入るのがうれしくてたまらない。私は眼球だけで彼を追うと、彼も優しい瞳で応えてくれる。



本すら自分で持てない私のために、彼が朗読してくれる。

「ヤバイな、恋愛ものは。恥ずかしすぎる」


クスクス笑いながら、素敵な純愛を読み上げる彼に、涙が溢れそうになる。彼ほど、純粋な心も持ち主はいないのではないかと。